Sitting on the Fence #6 文: 木本 和久 写真:光永 知恵 25時以降握り締め続けていた携帯電話が鳴ってからのことはよく覚えていない。ただ、朝になってもお互い、さようならを言おうとはしなかった。その中で僕は、ルミが2年前に離婚したこと、あ...

Sitting on the Fence #6 文: 木本 和久 写真:光永 知恵 25時以降握り締め続けていた携帯電話が鳴ってからのことはよく覚えていない。ただ、朝になってもお互い、さようならを言おうとはしなかった。その中で僕は、ルミが2年前に離婚したこと、あ...
Sitting on the Fence #5 文: 木本 和久 写真:光永 知恵 その日以来、ルミから連絡はなかったし、僕はルミの連絡先を知らなかった。『ロックン・ロール会』も自然消滅した。ミックのいないローリング・ストーンズが成立しないように、ルミを失った『ロ...
Sitting on the Fence #4 文: 木本 和久 写真:光永 知恵 「ごめん、宮田くん……本当にごめんなさい。わたし、結婚するまでは、そういうのダメだって決めてるの……わぁ、すごい血……どうしよう。ごめんなさい。ティッシュ使って、いっぱい使って!」 ...
Sitting on the Fence #3 文: 木本 和久 写真:光永 知恵 ポンコツ車は、相変わらず白煙と騒音を撒き散らしながら、目的地へ向かってくれている。あと、5分くらいで到着する。少々、話を急ごう。 『ロックン・ロール会』は、それぞれが別の高校に...
Sitting on the Fence #2 文: 木本 和久 写真:光永 知恵 中学1年の夏休み、僕は、親によって進学塾に放り込まれた。父親の知り合いが始めたばかりの塾で、親同士の付き合いに僕も付き合わされたようなものだ。 「ねえ、終わったら家に遊びに来ない...
Sitting on the Fence #1 文: 木本 和久 写真:光永 知恵 破れかけたマフラーが、後方に白煙を撒き散らすのがミラー越しに見える。助手席側の足許に開いている穴から、断末魔の呻き声のような騒音が、不快な排気ガスの匂いと共に容赦なく車内に入ってく...