2013年11月30日土曜日


旦過市場に入ったのは、数十年振りである。
懐かしくて、妙に嬉しく、夢中で中を歩き回った。
裏覚えだった鯨屋が、確かに今でもある。
入り口近くの花屋。
淡いほんのりとした色の、かき餅を売っている餅屋も、健在であった。
母に連れられ、足元から買い物のやり取りを覗き見ていた記憶が、昨日のように甦る。


仕事柄、日本中をあちこち出張に行き、その土地それぞれの市場にも、顔を出した。
しかし、こんなに美しい市場が他にあっただろうか?


陳列の見事さ。野菜の、果物の、魚の鮮やかさ、つややかさ。
まるで、隠れたディレクターがいるかのように、整然と並んで一分の隙もない。
どの店にも、特徴がある。同じようなさかな屋なんて、1軒もない!
地元に、こんな素晴らしい市場があるなんて、何と嬉しいことだろう!
 「昔のように賑やかでなくなってね...」という、お店の人たちの表情は、それでも、とても明るかった。
一回りして、結局、重くなるのも構わず、どっしりした新鮮な野菜や魚を、予定外に買い込んでしまった。
朝の市場での楽しい探検が、充実した1日の始まりとなった。



©Kayoko Shinbara(新原 香代子)
 
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