写真 空閑 学
文 十鮃寺 多聞
狙いはオフィス街まっただ中のコンビニだった。ちょうど祝日の夜で、このコンビニはガランとしているはずなのだ。
ウメズが役割分担を再確認した。
「まずコムロは外にいて、誰かきたら『映画のロケ中です。しばらく入れません』って言って、客を帰せ。それから俺は他の店員を見張る。藤本はレジの店員に金を要求しろ」
「じゃあ行くぞ」
俺達は野球帽を目深にかぶり、ダイソーで買ったゴム手袋をして店に入った。
店員はいなかった。店長らしきおっさんが、レジ後ろのたばこを補充していた。
俺はレジのところへ行き、『金を出せ』と油性マジックで書いたA4の紙を置き、井筒屋の紙袋を指さした。
顔の全パーツがでかい店長らしき男は、紙を見るとびっくりし、目玉が落ちそうな顔をして、「え! えー!!」と声を上げた。
「こういうの困るんだよね―! だいたいレジにあんましお金入れてないんだよ。強盗防止でね、本部からそういうふうに言われてっから」
俺は早くしろというように、『金を出せ』の紙をバンバン叩いた。
店長は俺の顔を覗き込みだし、「ひょっとして、君、藤本くんじゃない? 3年2組だった? だ、だよねー?しっかし、きみ、何をやってんだよっ?」
俺は黙って、井筒屋の紙袋を突き出したが、身元がバレたことに動揺して汗をかきだした。
「僕、覚えてるかなあ? 富永だよ。科学部の」
ああ富永。ギョロ目で口も鼻もでかくて、びっくりさせると面白いのでよくいじられていた。勉強ができて、九大だか早稲田にいった、そんな奴がいた。富永がなんでコンビニなんかにいるんだ。
「藤本くん、あだ名があったよね。なんだっけなー? そうそう! 『三日月』! 頭に三日月の形したハゲがあったんだよね。懐かしいなあ」
俺は、仕事が思ったように進まず、その上嫌な記憶を掘りおこされ、緊張と不愉快さがごっちゃになった。後ろでウメズが困ったように、「おい大丈夫なのか?」とささやくように言った。
俺は破れかぶれになった。
「ああー! そうだよ! あたりだよ! 俺だよ! 富永ぁ! 昔のことはどうでもいいから、金だすのか出さないのか!」
富永は似合わない制服を着て、汗だくの俺を前にして涼しい顔でよどみなく語った。
「今金を渡すとするでしょ。そうして警察に被害届けを出すと、現場検証で明日は店を開けれないわけ。でも明日からは会社も始まるし、そうすると商売上がったりやん? 朝から昼まで開けられないと、おにぎりやお弁当が売れないし、すごい損害なんだよね。だから僕としては警察に届けたくないんだよね。でも君たちもビデオに写ってる弱みもあるでしょう?」
富永はレジの後ろについている防犯カメラに目をやった。
「ああー! そうだよ! あたりだよ! 俺だよ! 富永ぁ! 昔のことはどうでもいいから、金だすのか出さないのか!」
富永は似合わない制服を着て、汗だくの俺を前にして涼しい顔でよどみなく語った。
「今金を渡すとするでしょ。そうして警察に被害届けを出すと、現場検証で明日は店を開けれないわけ。でも明日からは会社も始まるし、そうすると商売上がったりやん? 朝から昼まで開けられないと、おにぎりやお弁当が売れないし、すごい損害なんだよね。だから僕としては警察に届けたくないんだよね。でも君たちもビデオに写ってる弱みもあるでしょう?」
富永はレジの後ろについている防犯カメラに目をやった。
「僕もさ、『コンビニ強盗,捕まえてみたら同級生!』なんて新聞に書かれたくもないしさ。それ、イメージダウンもいいとこやん?」
富永はズボンの後ろのポケットから長財布をだして、3万円紙袋に入れた。
「これで勘弁してくれない? どうせレジにも同じぐらいしか入ってないよ。帰ってくれたら君たちが写ったビデオも消しとくから」
俺は予想外の展開に二の句が継げなかった。
富永はズボンの後ろのポケットから長財布をだして、3万円紙袋に入れた。
「これで勘弁してくれない? どうせレジにも同じぐらいしか入ってないよ。帰ってくれたら君たちが写ったビデオも消しとくから」
俺は予想外の展開に二の句が継げなかった。