2014年1月6日月曜日

写真 空閑 学 
文 十鮃寺 多聞

 一時間後、俺達は小倉駅北口のペデストリアンデッキのベンチでビールを飲んでいた。メーテルの銅像が俺たちには関心なさそうに隣に座っていた。
 夜の駅はJRで帰宅するサラリーマン,高校生が足早に通り過ぎていく。下の階からは路上シンガーの誰かのまねみたいな歌声が聞こえてきた。


「結局これでよかったんじゃねー? 警察に届けられる心配はないし、どうせレジにも3万円ぐらいしかはいってないって言ってんだろ」
 コムロは満足そうだった。
「それにしても、藤本さ、お前本当に三日月ハゲあんの?」
ウメズが思い出したように,にやにやした。
「あるよ、あることは……」と俺はそっぽを向いたまま、昔のアダ名を知られた不愉快さをビールの苦さといっしよに飲み干した。

© Manabu Kuga

―了―

短編連作『小倉三文オペラ』 
 
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