2014年5月26日月曜日


まだ、ちょっと早いかね

人っ気のない広場を去ろうとしていると、そんな声が聞こえてきた。
声の先を見れば、お婆さんが急な斜面で紫陽花の花枝を摘んでいた。

そうですね、あと一週間ほど先のほうがいいのじゃないですか

そう応えたら、斜面を上ってきた。
どうやら脚が悪いらしいので、途中まで下りて、手を引いてお手伝い。



ありがとうね

それからしばらく話をした。
ご近所に住んでいる方で、森さんという。
数年前に事故で高所から落ちて、それ以来、足と腰が不自由になったとか。

写真を撮っていいい?
こちらに目線ください!

そういうと照れていたが応じてくれた。


そういえば、この広場に上る途中の小径でアザミを見かけたことを思い出した。

お婆ちゃん、ちょっと待っててね。

そういって小径を下り、アザミを二本とって戻ると、とても喜んでくれた。
また、会えるといいな。
会いたくなれば、この広場に来ればいい。
きっと会えるだろう。

この広場の名前を訊くと、八幡公園だよと教えてくれた。
その奥の道から、八幡神社へ行けるから、行ってみればいいよ。

……続く

© Junichi Nochi(野知潤一)
 
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