幻視行 ― 川淵公園
十四歳の春まで暮らした八幡東区の川淵町。
毎日遊んだ川淵町公園の前に車を停めて、周辺を歩き、戻る途中の路地から見た景色にフラッシュバックのように昔の記憶が蘇ってきた。
路地の先に写っている車の右にぼくの家があった。近所の友だちや町の人たちの声が聞こえてくるようだ。
この近所に住んでいた幼馴染が最近亡くなったというのを聞いていたので寄ってみた。その家は昔は氷やLPガスを商っていたのだが、こざっぱりした家に変わっていた。誰が今住んでいるのだろうか? 車を停めてその前で佇んでいたら隣の家から年配の方が出てきたので聞いてみると、今は誰もこの家では暮らしていなくて、法事などの時にだけ家族が集まるのだという。
そんな話を聞いた後、川淵公園に戻った。町中の小さななんの特徴もない公園で、昔とは遊具も変わっているのだが、その隅っこに「八紘一宇」の石碑があった。裏には、皇紀○◯年と書いてあるので、ぼくの子供の頃から此処にあったのは間違いないが、まったく記憶にない。
© Junichi Nochi(野知潤一)