日常の晩秋
街路樹も色づく雨の日
西本町と前田の町境と、平野と祇園の町境
抜けるさくら通りを走る。
信号停車でふと右に目を向けると
晩秋の冷たい小雨の降るなか
傘も差さないで信号を待っている女性が二人。
車椅子に乗っている老人は、右に左に手を
伸ばしながら後ろの女性に何か話している。
その度に車椅子に両手をかけている女性は
車椅子の進行方向を変えていた。
雨に濡れていく二人。
信号が青に変わる。
朝から雨は降っていた。
沈黙の玄冬が来る前の落ち濡れた葉たちの
死とはいったいいつなのか。
落ちた時か。
土に還った時か。
町中の落葉たちは
コンクリートに覆われた下水路の奥で
土にも還れずただ朽ちてゆくのか。
過ぎゆく日常。
『日常の晩秋』
© Gen Okawa(大川 元)